「泥んこ」邂逅 〜 矢野麻紀子・宮城景花 二人展より
2023年1月7日〜29日、奥鎌倉おりぜで開く予定の「邂逅(かいこう)〜矢野麻紀子・宮城景花 二人展」のテーマの中から掲載します。
会場では二人展の作品の中から合計6点をセレクトし、ポストカードのセットを販売する予定です。
また、1月8日(日)15:00-18:00には美味しいおつまみを用意し、ささやかなオープニングパーティを行いますので是非いらしてください。
「泥んこ」
あれは確か、小学校3年生くらいの時だったと思う。
UFOみたいな遊具のある近くの公園に大勢で集まり、毎日のように砂場で大きな迷路のようなものを作っていた。高学年のお兄さんやお姉さんたちも交えて、かなり完成度の高い大きな仕掛けを作る。砂を固く地ならしするためには水が必要で、バケツに汲んだ水を適宜砂に撒いて湿らせながら、ビー玉がころがる道を整備していくのだ。
その時に、必ず必要なのが「王冠」。大概は大人が飲んでいるビール瓶の王冠で、大人が栓を抜いたらすかさず袋の中に入れる。「ビーコロ」と呼んでいたその遊びのために、袋にじゃらじゃらと貯めている王冠は子どもたちの宝物だった。
砂場のビーコロのルートには、王冠がいくつも埋められている。初めはスタート地点に表面を出して埋めた王冠。そこにビー玉を上からコンと当ててレースはスタートする。
勢いがうまくつかないと、途中の裏返した王冠の中にビー玉が入ってしまう。そうするとその玉はビーコロの台を作ったチームに取られてしまう。今考えてみればなかなかヤクザな遊びだったと思うんだけれども、とにかく小学校の時の放課後で、1番心が躍った思い出はそのビー玉転がしの遊びだった。
水でどろどろになった砂場。ビーコロの終わりに、みんなでぐちゃぐちゃに壊す時の開放感。
家へ帰る途中の車道には、石蹴りの枠が白墨でいくつも描かれていたし、ゴム飛びの数を数える声は暗くなるまで響いていた。
商店街には小さい子も大きい子もひしめき合っていて、いつでも子どもは泥だらけだった。そして30年以上が経ち、私たちの子どもたちは保育園で泥だんごというものを作っていた。
土に水を混ぜて固めていき、両手一杯の球体を作って磨き上げる。
園庭で走り回ったり転んだり、少年野球のグラウンドでは子どもだけでなく大人まで泥だらけだ。同じ子育て期を過ごした仲間たちに、ふと浮かぶ言葉を出してもらった。
「泥んこ」というキーワードが出た時にまず浮かんだのは、さまざまな笑顔。
ある子は塗りたくり、ある子は泥水の飛沫にまみれ、ある子はただただ笑っている。自分の子ども時代の思い出。
それを次の時代に追体験した思い出。泥だらけの服に「ウタマロ石鹸」を塗ることも無くなった今、なぜか今度は手を真っ黒にして「泥んこ」の絵を描いている。
あのワクワク感は、変わらぬままで。