祖母のこと。心の扉を開けるということ。

宮城景花 ガラスペン画教室 鹿児島出張講座
BLOG

鹿児島で3日間の出張ガラスペン画講座を終えて帰宅した次の朝。もう20年以上前に亡くなった祖母が夢に出てきた。

明治生まれでとても強い女性だった。後継ぎがなかなか生まれない果ての女児だったため、私は小さい頃から「望まれない孫」だった。

習っていたピアノの音がうるさいと、蓋にボンドをつけられてしまう。弟が生まれてからは、前にもまして差別が酷かった。

商人の出だった母に対しても風当たりが強く「出産など病気ではないから」と、赤ちゃんが生まれたらすぐに病院から連れ帰り、炎天下の中草むしりをさせる。

私にとって父方の祖母は、そんな怖い存在だった。あまり言葉を交わさずに声も小さかったので、余計に祖母がどんなことを考えていたのかが分からないまま、今世の別れとなった。

その代わりに、母方の祖母は私をとても可愛がってくれた。同じ町に住んでいたので、私は多くの時間を母方の祖母の家で過ごし、生活に関わる色々なことを教わった。

働きながら、お金をかけずに楽しく挑戦すること。古いものや手持ちの材料で色々なものを工夫して作ること。季節の食材に手を加え、保存できるものを作ったりしていくこと。

私が結婚する時には「景花、人生にはいい時ばかりではないけれど、おかずが用意出来ない日でもこんな風にしたらちゃんと一食になるんだよ」と、糠床の底に埋まったきゅうりの古漬けを細かく刻み、ぎゅっと絞ってご飯の上に乗せちょっと醤油を垂らして出してくれたりした。

そんな訳だから、怖かった父方の祖母が夢に出てきたことに驚いた。それも久しぶりに会った祖母は、90歳をすぎてもお世話になることのなかった車椅子に乗っていた。

どうやら夢の中のストーリーとしては、その日一日、何らかの理由で私が祖母と過ごすことになった、ということらしい。私は不思議と祖母に対しての感情は何も持っておらず、ただただまっさらな気持ちで一緒に過ごしていた。

車椅子を押し、散歩に行ったり移動の時は祖母を抱き抱える。祖母は思ったよりも小さく「そう言えば、こんな風に祖母に触れるのも初めてだな」と思った。

つつがなくその1日を終えるまでの過程で、祖母は「自分を出すのが怖いんだよ」というニュアンスのことを言った。そして私は、それまで祖母と心を開いた交流をしていなかったな、ということを悔いた。

目が覚めた時「おばあちゃんがあんな風な態度だったのは、時代や環境などがそうさせたのだ」と思った。そして、本当は立派に人生をやりとげながらも、チャレンジングで純粋なところもある、素敵な人だったのかもしれないと思った。もう少しこの夢のような1日が早く来ていたら、存命中にもっと色々な話ができたかもしれない。この続きは、あと少しお土産話を作ってから私があちらに行った時にまたしたいな、と思った。

人はどんなにか毎日の中で「楽しいと感じる、本当の自分の気持ち」に蓋をしていることだろう。

何かをする時、失敗してはいけないと思う。誰かに恥ずかしくないようにしなくては、と思う。表現をする時に、習っていないから、できないと思う。理由なく、好きなことを優先してはいけないと思う。

もし、それらの蓋をそっと取る機会があったら…もしかしたら、何かが変わるかもしれない。

本当に本当に僭越ながら、今回鹿児島でたくさんの方とガラスペン画教室で関わる中で、そんな「蓋を取る役割」が出来たかもしれないと思う瞬間があった。

不思議なことに、どんなに真似をして描いても同じ絵は一つもなく、その人の個性やその日の状態が滲み出てくるガラスペン画。それはお世辞ではなく、どの1枚にもいいところが宿っている。

わざわざ遠くから足を運んでくださった方、学校で人との関係が上手くいかなくなって心がちょっと硬くなってしまったけれども少しつづ素敵な絵を描いてくれた方、2度もドクターヘリで搬送される大病をされて家に引きこもりがちになっていた方。

色々なことに興味があって「行動」するたびに表現の引き出しが無限大に増えている方、2度目の参加でもうすでに「心を解き放つ」ことがわかっていてどんどんユニークな絵を描いて行く方…

たくさんの方にご参加いただけて、本当に私の方が楽しく、幸せに勉強させていただきました。

宮城景花 ガラスペン画教室 鹿児島出張講座

宮城景花 ガラスペン画教室 鹿児島出張講座

宮城景花 ガラスペン画教室 鹿児島出張講座

宮城景花 ガラスペン画教室 鹿児島出張講座

宮城景花 ガラスペン画教室 鹿児島出張講座

また、お会いできるように私も精進したいと思います!本当にありがとうございました。

鹿児島でのガラスペン画教室が始まった経緯はこちらのブログにて

そして初めての鹿児島の個展と教室の様子

そもそも、なんでガラスペンで絵を描くことになったのか?はこちら