庭をいじりながら

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庭のある家に住むのは、実家にいた時以来だ。

この家の内見の時には、大家さんご夫妻の面談があり「庭は自由に掘り返して、植物を地植えして良い」と言われた。

庭師の娘でありながら、庭のことをほとんど聞かないうちに父は死んでしまった。

母は、と言うと、庭や土、緑を異常なほどに忌み嫌っている。

それも仕方ない。かなりの辛い思い出がある。母がまだ健在な今は公の場に書く気にならないが「たった一世代前、女性と言うものはそんな風に扱われたのか…」と思うようなことだ。

だから、庭に対する本職の思い入れと同時に、大きなネガティブ感情を浴びて育った。

庭は孤独な子どもにとって、小さな命が息づく居場所でもあった。池に蛙が産み落とした卵や小さなおたまじゃくし、いろいろな虫や、実をつける枇杷、柿、杏、梅、柘榴…。

手にとって、感触・匂い・色味・温度…その場の空気が悲しいものなのか、抱かれるようなものなのか…様々なことを感じ取っていたと思う。

そして「もう気味が悪くて嫌だから…」と母が玉を抜いてしまった、小さなお稲荷さん。そんな思い出をなぞるように、いま、この北鎌倉の庭で、土と向き合う。(移り住んだ家の路地の突き当たりには、古いお稲荷さんがある)

今朝は大家さんがくれた朝顔に、新しい色の花が咲いた。シックでパウダリーなピンク色。このまま口紅になっていたら欲しくなるような。

そして家からすぐの花屋さんは「明日から夏季休暇なので」と、鉢物を全部半額にしていた。

この大きな、いい香りのする多肉植物も50円。寄せて植えて玄関に置いたら、わざわざ来てくださる方へのおもてなしになるだろうか?

あまりに安いので、自転車を荷物運び用に一回取りに帰り、すぐにまた店に戻った。

前と後ろ、いっぱいに鉢を詰めながら「何だか素敵な自転車になりましたね☺️そのまましばらく近所を走ってみたら?」とお店の人が言う。

そんな優しいゆるさが心地よい。

なんちゃって初心者ガーデニングは、始まったばかり。庭でとれたもので保存食など作ることが出来るだろうか?

近所の友達に、お裾分けできる日が楽しみ。