【心に残る店】彦右衛門(富山県・氷見)

彦右衛門
BLOG

今朝は朝から、海沿いの温泉郷に向かうバスを1本逃してしまった。次のバスまで1時間。まだあまり歩いたことのない道だったので、雨の中あてもなく歩いていたら、看板のかかった古民家に灯りがついているのを見つけた。

古民家カフェ、彦右衛門。和スイーツと珈琲を出すお店らしい。珈琲も飲みたいし、この辺りに残る古民家の内部にも興味があったので入ってみた。

引き戸をガラガラと開けると、天井がわーっと高く開けていて、鮮やかなピンク色の芍薬が品よく飾られていた。鎌倉や京都にあったらすぐに人気のお店になりそうだ。奥の方から人の声がする。靴を抜いで土間を上がると、カウンター越しにお客さんとにこやかに店主が話をしていた。

ゆったりとした広間。縁側越しに庭が見える。話を聞けばここはかつての網元の邸宅で、一人残ったお母さん暮らしていたが、東京からUターンした若夫婦と一緒に2年前にカフェをオープンしたそうだ。


建物は大正11年に建てられたとのこと。気候だろうか、建材や建て方、地域の歴史、手入れもあるのだろうが、関東の古民家よりもずっと状態がいいような気がする。

こんな風に未だ残る建物を、煌びやかにせず自然な形で活用できるのは本当に良いことだなあと思った。決して観光客相手ではなく、本当に美味しい物を地域の人のために出す。

「彦右衛門さんの珈琲を飲まんことには、1日がはじまらんからね。」カウンターからお客さん同志の会話が聞こえてくる。話を伺ったお母さんの笑顔も穏やか。自家焙煎しているという珈琲が美味しいのはもちろんのこと、豊かな土地に住む人たちの言葉に、心が柔らかくなった。