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与えられたものを曲げずに放つ

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今年の4月頃藤井風というアーティストを知って、自粛期間中YouTubeに釘付けになった。

天賦の才能という言葉でも物足りないほどの衝撃を感じた。こういう時代にこういう人が出てくるなんて、天の采配ってすごいなあと思ってる。

この週末は、ファーストアルバムの最後に収録されている「帰ろう」という曲のMVが公開になったり、日本人で初めて選ばれたArtist on the Rise(YouTubeをきっかけに活躍したアーティストが取り上げられる)のビデオが発表されたりした。

音楽教育を受けていないお父さんが「これからはYouTubeの時代だ」と言って、お兄さんとの共同作業で演奏画像をアップしたのが始まりとのこと。

Artist on the Riseの中では、岡山の小さな町で4人兄弟の末っ子として生まれ育った経緯が朴訥と語られるのだけれども、その中で印象的だったのは、クラシックの演奏をアップしていた中学生当時のコメント欄のこと。「そんな雑に弾くな」とか「音が悪いな」という投稿があったという。

それに対して中学生の藤井風は「雑じゃないと、このグルーブ感は出んのんやで」と自分の中で思っていたと・・・。

ただものではない男子が出てきたことへの大人の嫉妬や、「こうでなくてはならない」というセオリーを、芯の強い純粋さが乗り越えたのか。

夢中になって続けた演奏は「血のにじむ努力」みたいな重たくて固いものではなくて、あくまでも軽い。オリジナル曲を書くようになってからの作品は、自分と他者、この世とあの世の次元をも超えていく。

あああ。ほんとに。
持って生まれたものがジャッジされず曲げられずに、今とりあえずは、聴衆の耳に届くようになっていて、本当に良かった。彼のように目に見える才能がなくたって、若い人はそんな風に育てればいいんだよ。

もしアルバムを聴きたいなと思う人がいたら、まだ初回限定版が買えるようだからそれを購入するのをお勧めします。本編の他に1枚、カヴァーだけのアルバムがついてる。

親御さんが子守唄に歌ったCarpenters、O’JaysからAmy Winehouse、Ed Seeranまで。YouTubeでも堪能できる、ジャンルを超えた曲の数々を完全に消化して別のものにする手腕が美しくまとまってる。